自身の家族や介護施設の職員を問わず、よりスムーズな介護を行う鍵はズバリ、相手との良好な人間関係の構築だ。とりわけ職員として介護サービスを提供する場合、相手の心身の状態や性格を的確に把握の上、介護に必要不可欠とされる、相手への尊厳を忘れてはならないのである。ここでポイントとなるのが、尊厳の解釈を誤り、過剰に丁寧過ぎるお客様対応に及んでしまわない、相手との適正な距離感だ。
多くの利用者と切り離せない症状に、認知症があげられるが、その程度の個人差は小さくなく、その兆候が見られない相手の場合、羞恥心を傷つけない配慮が大切だ。今までできていたことが誰かに助けてもらわなければできないという状況は、いらだちや絶望感を湧き起こす。そうした心境の中、テキパキと介護されると心を開くことはできないのも当然だろう。こうした利用者に対しては、あくまで自然な表情と口調の中に、細やかな部分への心遣いを忘れない、目線を合わせた接し方を心がけるべきだ。
対して認知症が進み、こちらの伝えたい内容が理解できない、会話が成立しない場合、一方通行の事後報告的な語り掛けにおよびがちだが、これでは相手の気分を害するばかりだ。言葉の意味はわからずとも、職員に対して一旦悪印象を抱いてしまえば、ストレートに反発を表現されて当然である。
相手が自身でできることはやってもらい、そうした協力に対してその都度感謝を表現する繰り返しが大切だ。自分にはできることがあること、そしてそれをこの人に教えてもらったと感じれば、親近感と信頼を覚えるのが自然な流れだ。こうした利用者に対しては、命令や指示と受け取られる言動を控えることが、良好な人間関係構築のコツである。